作家インタビュー

初めてのサントラ制作『東京リトル・ラブ』(2010)

僕がサントラの仕事をするようになるきっかけは、リア・ディゾンの仕事だったんです。僕は外部のディレクターとして、その発売元だったビクターエンタテインメントの洋楽担当という形で吉田さんと初めて出会いました。現場で吉田さんに、「ディレクターとして来ていますが、こんな音楽も作ってます」ということで、自分のCDをお渡ししました。それから2年くらい経ち、僕のCDを覚えていた吉田さんが連絡を下さったんです。その時、吉田さんはビクターエンタテインメントを辞めてフジパシフィック・ミュージックに転職されていました。中田ヤスタカ(capsule)さんが音楽をやっていた『LIAR GAME』を監督された松山博昭監督が初めて深夜枠のドラマを演出するので、音楽に誰かいない?という話が僕のところにまわってきたんです。『東京リトル・ラブ』(2010)というタイトルで、初めてのサントラ制作のお仕事です。

最初のフジテレビでの打合せを終えて、お台場からゆりかもめで帰る時に、吉田さんが「Kenちゃん、長めの曲を3曲くらい作っておけば大丈夫だよ。向こうでシーンに合わせて切って使ったりしてくれるから」って僕に言うんです(笑)その後、締め切り前日に音響監督のZERO WAVE泉さんから電話がかかってきて「どうですか?」と。どうですかと言われても3曲しかできていなくて(笑)それから吉田さんが僕のスタジオに来て、最低でも30曲は作っていかないとならないので、ここでは多くは言えないですけど、ウルトラCの技を色々と使って、なんとか2人で切り抜けたという思い出があります。今からは考えられないですけど、無知って最強ですね(笑)。

打ち合わせの時に、どのくらいの曲数とか、音楽のメニュー(場面に使う各音楽のイメージなどを箇条書きにしたようなもの)もあったんですけど、僕らの音楽業界とサントラを作る方の音楽業界って、立ち位置、雰囲気が微妙に違う部分もあって、僕らは違うタイプの曲が3つくらいあれば…と思っていたんですよね。例えばメニューには、「悲しいA」、「悲しいB」、「悲しいC」と書いてあっても3つのタイプを作るというのがわからなくて、単に曲のイメージだと当時は思っていたんです。

メインテーマはすぐに完成し、監督もすごく喜んでいたし、こんな感じで良いんだ、という安易な感覚になってしまい...。でもこの経験があったおかげで、サントラ制作がどういうことかを初めて知ることができました。こんなにたくさんの曲が必要なんだということを含め。

この作品では、全て打ち込みではなく生楽器も欲しいということになって、ピアノと胡弓をスタジオで録ったんです。スタジオ・ミュージシャンのピアニストが来て、僕も好きな方だったんですが、譜面が読めない(笑)。その上、両手で弾くところ、片手で単音を弾いていくというとんでもない展開もありました。音に人間味が欲しくて生に差し替えたのに、あまり意味がないという…(苦笑)。一方で、胡弓の方はすごい有名なミュージシャンだったんですが、僕がF#キーの曲なのに調合なしのC majキーで譜面をプリントしてしまい、♯や♭の臨時記号だらけの譜面。それでも普通に弾いてもらえましたけど、あとで「アレは無いよ」と怒られました(笑)。でも、サントラ制作を始めた初期の良い思い出ですね。

『東京リトル・ラブ』の後は、サントラの仕事はしばらくなかったんです。それから2年後くらいに、松山監督に気に入っていただけたとかで、フジパシフィックの吉田さんから連絡が来て、月9ドラマ『鍵のかかった部屋』(2012)を松山監督がやることになったので、「Kenさんどう?」という話を頂き、”僕で良ければ是非やらせてください!!” ということで担当することになりました。

日本テレビ系アニメ『寄生獣 セイの格率』(2014)

日本テレビ音楽の浦田さんから、この作品の音楽プロデューサーだった千石さんに僕のことをご紹介いただいて、「詳細をお話しします」と、ウチの方まで来てくださったんです。お会いすると千石さんがモヒカンだったので(笑)コレは面白そうな作品だなと思いながら打ち合わせをさせて頂きました。『寄生獣』は原作を読んで知っていましたが、これをアニメでどこまで表現できるのかな?と思いつつ、音楽については好きにやって良いですよと。バキバキにやってくださいというお話でした。

メインテーマは「I AM」という曲で、ダブステップ。あの頃はスクリレックスやポーター・ロビンソンが来ていたし、あまり音楽は作品の内容に寄せないで好きにやって良いと言って下さっていたので、気持ち的にも楽でしたね。

ただ、映画も同時に公開されるというお話だったので、劇場版とは被らない音楽にしたいと思っていました。僕にオファーをくださるということはどんな音になるかきっとわかっているでしょうから、とにかく思いっきりやっちゃおうと(笑)。

音響監督が山田知明さんという方で、最初に納品した楽曲がメイン含めて15曲くらいだったんです。すぐに頂いたレスのメールに、”とても素晴らしいけれど、みんな派手すぎる。もうちょっと中間みたいな曲が欲しい”というのがあったので、その後に、ビートが入っていなかったり、音数が少ない、何気なくかかっているような脇を固める曲を多く作っていきました。

日テレの名物プロデューサー中谷敏夫さんの存在も大きかったですね。「Ken Araiが音楽を担当してくれるのだから」とすごく推してくださって、ラジオやプロモーションにも呼んでいただきました。当時新卒、今やエース(笑)の日本テレビ音楽の穐山さんとも知り合えましたし、音楽以外にも色々なことに絡めたので、この寄生獣チームはとても楽しかったですね。このサントラは今でも海外からの反響がとても多いですから。アニメの音楽は時間が経っても生きているというのを、この作品で実感しています。ドラマの音楽とは違う派生の仕方ですね。

NHKの3DCGアニメーション『ピングー in ザ・シティ』
(2017/2018)

この作品を担当したきっかけというのも面白い縁で、『失恋ショコラティエ』(2014)というフジの月9ドラマの打上げの際に、音響監督の泉さんが作家マネジメント会社デイブレイクワークスの井田さんを呼んでくださったんです。それが縁で「Kenさんはフリーでやられているなら、音源を預かって、営業させて頂いても良いですか?」というお話を頂き、もちろん快諾したのですが、口約束でしたから、忘れているだろうなぁとも思っていました。

それから1年半くらい経った後、井田さんから連絡があったんです!ずっと約束通り、井田さんは僕の音源を持って動いてくれていたそうなんです!そんな中で、世界的に有名なキャラクターの『ピングー』をNHKで新たにリメイクすることになった際、監督さんやスタッフのみなさんが僕の音源を聴いてくださり、初めてNHKに行った時には、すでに僕で決定という話になっていたんですよ(笑)。

井田さんはデイブレイクワークスで作曲家のマネージメントをされているので、本来であれば自社の作家さんをブッキングしたいはず。それなのに、僕を推してくださり本当にありがたいなと心から感謝しています。

『ピングー in ザ・シティ』の音楽は、監督さんからは子供っぽくなりすぎないように、大人が聴ける音楽であって欲しいという基本線の話はありましたが、あとは細かい指定は無かったです。だいたい、いつもそうなんですが、10曲くらい最初に作って、こういうのはどうですか?という、僕からの提案型です。30曲くらいはわりとすぐに作れるタイプですが、それがミスリードになってしまうと良くないので、最初にメインテーマを含めて10曲くらい作り、確認して頂いて、それでOKならばあとはそのテイスト/方向性で作っていきます。

『ピングー in ザ・シティ』は、アニメーター、脚本、NHKの音響チームさんなど関わっている人のみなさんから、モノ作り愛が溢れていました。作品によっては、アフレコなどの音響の現場に作曲家さんは来なくても…というのはあるんですが、ピングーは現場にも呼んでいただいて、より良いものを作りたいというのがヒシヒシと伝わってくる現場でした。声優さんとも仲良くなれたし、新しい出会いもたくさんありましたね。

日本テレビ系ドラマ『トドメの接吻(キス)』(2018)

1月期のドラマでしたが、最初の打合せは早い時期にありました。これは日本テレビ音楽の穐山さんからオファーを頂いたと思います。主題歌は菅田将暉さんで決まっていました。打合せに行くと、演出の菅原監督が「内容的にオヤジはいらないから、ターゲットの層を絞ってキレキレで良い!」と言うんです(笑)。「だからKenさんは思い切りやって」と。ただ、「バンドっぽさ、和モノ・ロック感はあった方が良い」というお話があって、このドラマは東京っぽさというか、ホストが中心のドラマなので新宿歌舞伎町感みたいなところは考えましたけど、ドラマの内容に寄せてということはあまり考え過ぎずに音楽は作りました。撮影現場にも呼んで頂き、出演者の皆さんにもCDを渡せたし、そういう面でも本当に面白かったですね。現場も若くて旬な役者さんばかりで楽しい雰囲気が伝わってきて良かったですし、プロデューサーの鈴木亜希乃さんもとても良い方で、音楽について色々とお話しをしたりして、自由に音楽を作ることが出来ました。

制作中、僕はメインテーマ=タイトルバックだと思っていたんですが、菅原監督と話しているうちに、どうもそうではないらしいというのが伝わってきて、早く言ってよというのはあったんですけど(笑)。12月に入ってもまだタイトルバックが出来ていないという…結局、12月末くらいにタイトルバックはできたんじゃなかったかと思います。割とギリギリでしたね。

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