作家インタビュー

仕事と自身の許容量と

僕が関わる作品はギリギリなのが多いですね(笑)。今年(2019年)は1月のフジ月9『トレース~科捜研の男~』を担当していたんですけど、放送が始まってからも、追加の音楽をかなり作ってました。全て自己完結で音楽を作っているので、制作のスピード感は自分の武器だと思っています。映像の編集をやっている2時間の間に、それに合わせた別ヴァージョンも作って完パケ納品ということもあります。そういうフットワークの軽さも込みで、呼んで頂いているのかなと。ただ、スピード感はあっても肝心の中味が…ということは絶対ないように心がけています。

最近会う監督やサントラ業界の人には、僕は4年に1回で良いです、って言ってるんです。忘れ去られたぐらいのタイミングで、パッとやるというのがちょうど良くて面白いのかなと。やりすぎてしまうと飽きちゃうので。今年はいいペースなんですけど、去年(2018年)は月9、ピングーの第2シリーズ、TOKYO MXの『スタミュ』もやって…と、ずっとサントラ制作が立て込み、自分で何を作ってるのか良くわからなくなっていたんです。

鬱とかにはならないタイプだと思っていたんですけど、さすがにちょっとヤバいなと思う時期もありました。いくら好きな音楽でもずーっと自宅スタジオにこもって作っていたら、おかしくなるなと。どうしても楽しいという気持ちも薄れてきてしまうので...。いつも気持ちに余裕を持って制作できたら良いですけど、去年は完全にマシーン化していましたね。どの仕事も一緒だと思いますけど、ペース配分はとても難しいですよね。そこは、1人でやっているデメリットかなと思います。仕事のオファーの断り方もいつも悩みます。とてもパワーが要ることだと思うんです。「いいですよー是非是非!」って受けるのはお互いに気持ち良く仕事ができますが、例えば、すごくお世話になっている方からのオファーでも、スケジュール的にどうしても受けられないシチュエーションの時は、自分の中でダメージを一番強く感じます。なんと言って断ったら良いのか、ずいぶん長く考えてしまうんですよね。理由がどうであれ、断られたほうは良い気持ちがしないというのはわかっているので。「なんだよ今まで色々と世話してやったのに…」とか思われてしまうんじゃないかとか…そんなことを考えていると、けっこう(心が)やられちゃうんですよね。もしマネージャーがいれば、この手のことはお任せできるとは思うんですけど、ギャラの交渉からスケジュール調整まで全て自分で決定するというスタイルは、メリット、デメリット含め、今の自分に合っているとは思っています。

サントラ音楽はCDでも配信でも、とにかくリリースを

僕はミーハーなので、売れているものが好きなんです。最近のテレビのサントラも音楽の流行に良い意味で節操ない部分があって、どんどんトレンドを取り入れてますからね。そういうミーハー感もテレビというメディアの特権だと思っています。テレビ離れと言われていますけど、東京から離れて地方に行くとテレビの力の大きさを感じます。

例えばドラマ自体の視聴率が高くても低くても、それがサントラ盤の売り上げとは必ずしもイコールではないですよね?映像のために作った音楽ではあるけど、サントラ盤として必ずリリースして欲しい。去年、あまり予算が大きくない作品でオファーを頂いた際も、ギャラやスケジュールよりもまず、サントラ盤をリリースすることが条件でした。もしリリース予定がないのであれば、自主制作するのでサントラ盤を出させてほしいともお伝えしましたね。僕にとって、作った音楽が世に出ないというのが最も悲しいことで、サントラのお仕事をする時の譲れない唯一の絶対条件は、CDだろうが配信だろうが音楽をリリースすることなんです。結局、その作品のサントラも配信で、無事リリースすることが出来ました。

アーティスト、a la i.としての最新作『Love Star』

a la i.という名義は僕がDJをする時にかけられるような、クラブ対応のダンスミュージックを作る際に使っています。a la i.のプロジェクトをスタートして9年間。この『Love Star』 で19作目になります。

ダンスミュージックのトレンドは1週間で変わっていくので、自分が古くならないため、トラックメイカーとしてのスキルを磨くというか、それを実験だけじゃなくて、ちゃんと作品としてリリースして、世間的な評価も得てやっていく場として、すごく大切にしています。自分のやりたいことを好き放題にできますからね。DJとしての自分のためという部分もあります。

僕が最近いちばんイヤだなと思うことは……もはや自分では音楽を作っていないのに、人のやっていることを批判するクリエイター。「EDMなんて音楽じゃない」、「ダブステなんてうるさいだけじゃん」とか。「そろそろ人を育てなくて良いの?Kenさんはまだ自分の音楽だけやっているの?」とか。そういうことを言いだしたらクリエイターとして終わりだと思うんです。否定するのであれば、まず自分で作ってリリースしてから言って欲しいと思うんです。a la i.のプロジェクトは、そういう自戒の念も込めてやっていて、もしカッコ悪いサウンドしか作れなくなったら、僕自身、音楽家としての終わりだと思っています。

サントラ仕事での良き出会いと大変さ

嬉しいことに、先ほどお話したフジの松山監督や音響監督の泉さんもa la i.の楽曲を買ってくださっていて、メインテーマを作る際の参考曲として、この曲がすごく良いのでこんな感じで、と言ってくださることもあります。このお2人を始め、その他にも、このインタビューでお話した方々と出会えたことが、サントラ音楽のお仕事ではとても大きいですね。

他の作曲家さん達の話を聞くと、仕事を得るにはやっぱり事務所に入らないとね…という話を良く聞きます。最近、改めて、サントラの世界で継続して仕事をするってすごい大変なことだなと感じていますが、今この時代だからこそ、音楽制作もマネジメントも全て自分1人でやっている僕のようなスタイルは面白いし、やりがいがあると思ってます。自分が何に重きをおいてやるかも、全ては自分次第です。

PageTop